レンの道   (文章:管理オーバル魔ペットJoya)   ファルコムのゲーム・英雄伝説『空の軌跡』シリーズ&『零の軌跡』のバレを含みますのでご注意ください。
                         @ … 2011.6.28記す 6.29細かい所を修正
   5 レンと両親とパテル=マテル
 @両親についての真実  前述( 1 過酷な運命に翻弄されたレン )などにあるように、レンは地獄のような場所で、深く傷つけられました。  レンをそのような運命に引きずり込んでしまったのは、レンの両親である。…と、ずっと思っていました。  血も涙もない、人間の感情を持つとも思えない親が、実の娘である無垢な少女を、暗闇にたたき落とした。  『空の軌跡』SCから3rdまでの情報だと、その通りです。経済に困った両親が、レンを犯罪組織に「売った」と。  『零の軌跡』では、そうではなく、不幸な偶然が重なってレンは両親の知らない所で「拉致」されたのだと判明しました。  それが判明するまでは、レンの話を聞いたエステル達も、プレイヤーも、この両親は最低だ、と思っていたでしょう。    レンが、自分は「捨てられた」「売られた」と思っていたのは、「思い込み」だった、ということになりました。  では、なぜ、そう思い込んでしまったのか。  「両親によって知り合いに預けられていた時に拉致された」という事実は、拉致された時の混乱で忘れたかもしれません。  それでも、物心ついてからのたった数年とはいえ、娘として愛された記憶は残っていたでしょう。  どんなに強い衝撃で心にダメージを受けたとしても、両親の愛情の記憶が全て失われるとは考えにくい。  ただ、色々なショックから、曖昧にはなっていただろうと思います。  そして混乱の中、怖い大人たちに囲まれ、状況を理解できぬまま実験台にされ、為す術なく「痛いこと」をされる。  愛された記憶の断片があっても、自分は今「楽園」という地獄にいるという事実。  愛されていたと思っても、今の事実と反する。記憶と現状がどうしてもうまく繋がらなくなる。  心も乱れて何が何だか分からぬまま、毎日意味の分からない攻撃に晒され、心を分裂させて自分を守るしかない日々。  そうやって必死に生きているのに、誰も助けてくれない。そこにいてレンを守るべきだった両親は何をしているのか?  そのうち、誰からともなく、「お前は売られた」というような情報が入ったとしたら。  或いはそんなはっきりした言葉がなくても、いつまでも助けにきてくれないのだから、裏切られたと感じるでしょう。  挙げ句、レーヴェ達に助けられた後でしばらくぶりに思いがけず両親を見かけたら、新しい子を抱いていて。  「あんなことになってしまった前の子」という、忌まわしい記憶のような言い方だけが耳に突き刺さる。  そうか、自分は必死に生きてきたけど、両親にとっては「あんなことになってしまった」亡霊なんだ。  それは、レンの勘違いです。ですが、天才だってエスパーではありません。両親の本心など、読めません。  だから、そこで考えるのをやめて、真実を知ることを放棄し、思い込みの中に逃げた。  文字通り事実を知ろうとすることから「逃げた」と言えるのでしょうが、これは逃げて当たり前だと思います。  両親を偶然見かける以前に、もう既に放棄していたかもしれません。それでも仕方ありません。  これ以上考え、深く知ろうとした場合、更に酷い両親の気持ちが分かり、闇のどん底に突き落とされるかもしれない。  自分の心が、今より更にグチャグチャに潰れて崩れてしまうかもしれない。  レンも「本当は愛されていた」だったらいいなと心の底では思っていたでしょう。  そう信じたかった。また、信じようとする、信じられると思いたい様子も随所に見られます。  ニセモノの両親、という言葉を使ったのも、本当の両親は自分を大切に思ってくれる筈、という思いから。  パテル=マテルを本当の両親と呼んだのも、強くて優しくて自分を守ってくれる両親を思い描いていたから。  寝言で「パパ…ママ…どうして…」と言っているのも、捨てられ売られたという「現実」を否定したいから。  天才でありながら、「本当は愛されていた」という結論に辿り着けなかった。  ちりばめられた事実は、全て否定的な方向を示していた。肯定的な材料が見出せない。  きっと「実際にカネのために売られた」とか「本心から要らない子と思われていた」とか。  そういう悪い方にばかり予想が傾いていたのではないかと考えます。  そんな嫌な事実を知るために努力して調べたり、両親に近づいたりするなんて、誰がしたいと思うでしょうか。  逃げたことは間違いだったというのは、良い結果が判明した後だから言えることです。  結果的には「本当は愛されていた」という「悲しくて優しい」真実だったわけですが…。  そこで簡単に「なんだ早く調べに来れば解決していたじゃないか」などと軽々しく言うのは浅はか。  「結果的に殲滅天使としての日々は全て無駄で愚かしいことだった」などと言うのも、間違っています。  レンの葛藤や戸惑い、生きるためにどちらを向いていたか、ということを想像すれば理解できると思います。    ここで少し視点を変えて、ヨシュアの言うように「そう思い込もうとした」のだとしたら…  自分は見捨てられた存在だから、今、執行者として強くなって、破壊活動をしている自分を否定しなくて済む。  と、いうことでしょうか。 それは「悲惨な目にあった自分なら許される」という考えとは違います。  許される許されないはどうでもよく、ただ、今の「強い自分」を崩すのが怖い、怖いから知りたくない見たくない。  そういった、「弱い自分」の拒絶。言葉を変えれば、闇への「甘え」ということになるかもしれません。  知らないままでも、曖昧なままでも、今は闇が自分を守ってくれる、嫌なことは忘れさせてくれる。  そう思っていたとしても、この件でレンに「逃げていたことがあなたの過ちだ」と言うことは私にはできません。  両親の思いをはっきりと確かめて知ろうとしなかったことを、責めることはできない。  知ることがどんなに恐怖でも、立ち向かわねばならなかった…それは、相手が大人なら言えるかもしれません。  ですが相手は、天才とはいえ少女です。  頭は良くても、長い期間、人の絆を感じることを許されなかった少女ですから。  さて、なぜ、それほど恐れていた「真実を知る」ということを『零の〜』で実行したのか。  それは…私の考えとしては、やはり…  SCから3rdの展開を経て、エステルやヨシュアの思いを受け止めたい気持ちになったのだと思います。  3rdの最後の「大嫌い」だけど「大好き」という言葉からも分かるように、拒絶は、本音の裏返し。  心の底ではエステルとヨシュアの家族になりたい、そうなれる自分になりたいと思っていたのではないかと。  しかし、今の揺れ動く自分、はっきりしない自分ではエステルとヨシュアにつかまっていいのかどうか分からない。  だから、とにかくはっきりさせよう。ずっともやもやしたままの両親のことも。  すごくイヤな、最悪の事実が分かるかもしれない、本当は怖い。場合によっては更に深く傷を抉られるかもしれない。  エステルやヨシュアの家族になれなくなるかもしれない。精神が本当に壊れて悪魔になってしまうかもしれない。  それならそれで、諦められる。自分は、エステルたちの思いを受け止められない存在なんだ、とはっきりする。  その時は、もうエステルたちに近づかず、これまで通り破壊者であればいい。  そこまで覚悟して、悲壮な決意で行動していたのだと思います。  Aパテル=マテルとの関係( 準 備 中 )

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